ベストプラクティス
エンドポイント特権マネージャーの導入
エンドポイント特権マネージャーの導入ベストプラクティス
特権昇格および委任管理 (PEDM) の導入を成功させるには、セキュリティと業務継続性のバランスを保つ段階的なアプローチが重要です。本ページでは、Keeperのエンドポイント特権管理を組織全体に展開するための推奨戦略をご紹介します。
第1段階: 基盤構築と情報収集 (1~2週目)
モニターモードから開始
導入初期は、すべてのポリシーをモニターモードに設定して開始しましょう。これにより、ユーザーの業務に影響を与えることなく、特権の使用状況を把握できます。
Keeperエージェントをパイロットグループに配布: 環境全体の10~20%を対象に、代表的なエンドポイントでテストを実施します。
すべての初期ポリシーを「モニター」モードに設定: 特権昇格のパターンを観察することに集中します。
1~2週間かけてデータを収集: 充分な情報を得るために、継続的にアクティビティを記録します。
多様なエンドポイントを対象に: 開発者用ワークステーション、標準ユーザーの端末、サーバーなど、異なるタイプの端末を含めて観察します。

特権利用パターンの分析
モニター期間中に以下をダッシュボードで確認します。
頻繁な昇格リクエスト: 定期的に管理者権限を必要とするアプリケーションやプロセス
ユーザーの行動パターン: 誰が、いつ昇格アクセスを必要としているか
正当な業務プロセス: 業務上の正当な理由で管理者権限が必要な操作
異常なアクティビティ: セキュリティリスクの可能性がある、通常とは異なる昇格リクエスト

コレクションと組織構造の構築
調査結果に基づいて、意味のあるコレクションを作成します。
ユーザーグループ: ロールに応じて分類 (開発者、ITスタッフ、一般ユーザー、経営層など)
マシンコレクション: 用途に応じて分類 (開発用ワークステーション、サーバー、キオスク端末など)
アプリケーションコレクション: 業務に不可欠なツールと管理系ツールに分類
カスタムコレクション: 組織固有のニーズに合わせたグループを作成
第2段階: 段階的なポリシー適用 (3~6週目)
モニター&通知モードの導入
主要なポリシーを「モニター」モードから「モニター&通知」モードへ移行します。
優先度の低いアプリケーションやユーザーグループから開始
モニター期間中に一貫したパターンが見られたポリシーを中心に適用
強制適用の前に通知に慣れてもらう
影響を受けるユーザーには事前に周知
基本的な制御の導入
ユーザーへの負担を最小限に抑えながら、セキュリティの基礎となる対策を導入します。
正当化の要件: 標準的な昇格リクエストに対して、簡単な正当化入力を求めるポリシーから始めます
時間ベースの制限: 業務時間外には、より厳格なポリシーを適用します
アプリケーション別ポリシー: リスクの高い、または不要な管理ツールへのアクセスを制御します
承認フローのテスト
機密性の高い操作に対しては、承認ベースのポリシーを導入しましょう:
信頼できる少数の承認者から開始: まずは限定された承認者グループで運用を始めます
重要度の低いアプリケーションでワークフローをテスト: 影響の少ない環境で承認プロセスを検証します
明確なエスカレーション手順と対応時間を設定: 承認が滞った場合の対応ルールを定めます
重要な承認には24時間体制の対応を確保: 業務に影響する操作に対しては、常時承認可能な体制を整備します
第3段階: 制御と最小権限化の実施 (7~12週目)
最小権限モデルの段階的な導入
コアとなる最小権限の考え方を、以下のように段階を分けて展開します。
パイロットグループ: ITチームやセキュリティチームから10~20名のボランティアユーザーで開始
リスクの低いユーザー: 管理者権限がほとんど不要なユーザーに拡大
標準ユーザー: 一般社員からローカル管理者権限を削除
パワーユーザー: 開発者やIT担当者と連携して、個別ニーズに合わせた最小権限を設計
多要素認証 (MFA) の適用
機密性の高い操作に対してMFAを追加し、セキュリティを強化します。
リスクの高いアプリやシステム変更を優先してMFAを適用
ユーザーがKeeperボルトに登録済みで、適切な2要素認証 (2FA) を使用していることを確認
MFAの設定手順とサポート情報を明確に提供
MFAの動作確認を実施 (夜間や緊急時などのシナリオも含む)
高度なポリシー制御の確立
より柔軟で強固なセキュリティを実現するため、高度なポリシー構成を導入します。
多層ポリシー: 同一リソースに対して複数のポリシーを適用し、防御を強化
条件付きアクセス: 日時によって異なるセキュリティレベルを適用
アプリケーション別制御: アプリごとの挙動に応じてポリシーを細かく調整
ファイルアクセス制御: 重要な実行ファイルやシステムファイルへのアクセスを保護
第4段階: 最適化と全社展開 (13週目以降)
全社環境への拡張
エンドポイント全体に展開を拡大する際は、以下の手順に従って段階的に実施します。
毎週100~200台単位でエンドポイントに展開
システムのパフォーマンスとユーザーからのフィードバックを継続的に監視
運用状況に応じてポリシーを調整
重要なケースに備えた緊急バイパス手順を維持
継続的な監視と改善
運用を定着させ、セキュリティと利便性を両立させるために、以下の継続的な運用を確立します。
週次レビュー: 昇格リクエストの内容やポリシーの有効性を分析
月次評価: 業務の変化に応じてポリシーを見直し・調整
四半期監査: 特権管理全体の効果を包括的に評価
年次ポリシーレビュー: 組織変更を反映し、すべてのポリシーを更新
成功の鍵
コミュニケーションとトレーニング
新しいプロセスや期待事項に関する明確な文書提供
エンドユーザー向けトレーニングセッションの実施
昇格関連の問い合わせに対応するヘルプデスク体制の確立
よくある昇格リクエストに対応するセルフサービスリソースの用意
技術的考慮事項
エージェント通信に必要なネットワーク接続を確保
オフライン状態でもポリシーが評価できる設計
ログ記録とアラートによるセキュリティイベントの可視化
重要システムアクセス用のバックアップ手順
ポリシー設計のベストプラクティス
制限優先: ポリシーが競合する場合は最も制限の強いものを適用
きめ細かな制御: アプリケーションやユーザー単位のターゲティング
業務との整合性: 実際の業務フローとリスクに即した設計
継続的更新: ビジネスや脅威の変化に応じて柔軟に見直す
緊急対応手順
重要システムへの緊急アクセス用「ブレークグラス」手順の維持
昇格の緊急申請時のエスカレーション経路の明確化
一時的なポリシー緩和に関する判断基準の設定
24時間対応の緊急承認連絡体制の整備
回避すべき一般的な落とし穴
拙速な導入: ポリシーの強制適用前に使用状況を十分に理解
過度な複雑化: シンプルに始めて段階的に拡張
情報不足: 導入過程では常にユーザーへの情報共有を行う
業務影響の無視: ポリシー設計時に業務要件を十分に考慮
モニタリング不足: 実運用に基づいた継続的な調整が不可欠
成功指標
導入の効果を評価するために、以下の主要な指標を追跡します。
管理者権限削減率: ローカル管理者グループからの削除ユーザーの割合
ポリシー準拠率: 特権管理ポリシーの遵守状況
ユーザー満足度: プロセス効率と操作体験に対するフィードバック
セキュリティインシデント件数: 特権に起因する問題の減少
運用効率: 正当な昇格要求の処理時間短縮
このような段階的アプローチを取ることで、エンドポイント特権管理を成功裏に導入し、業務の継続性とユーザー満足度を維持できます。段階的に進め、継続的に監視し、実際の利用状況とフィードバックに基づいて柔軟に調整することが重要です。
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